熱帯魚の病気には、細菌による感染症、寄生虫によるもの、外傷などがあり、症状によって使用する薬や対処の方法が異なります。
魚自身は人間のように体調不良を訴えかけてはくれません。
飼育者が日ごろからよく観察し、正しく判断・対処してあげることで、病気から救うことができます。
Contents
熱帯魚の病気の判断
熱帯魚が病気になっても、人間のように医者に診せるわけにもいかないので、飼育者自身が対処してあげるしかありません。
しゃべることもできない、自分で治すこともできない、新鮮な水のあるところに移動することもできない環境の中で、その小さな命を救ってあげられるのは飼育者であるあなたしかいないのです。
薬よりも日頃の管理による予防、手遅れになるよりも早めに処置してあげたほうがいいのは人間と同じです。
体調のいい魚は、美しくひれを動かしながら元気に泳ぎ回り、餌を沢山食べ、見ていても楽しくなるような姿を見せてくれます。
逆に、調子の悪い魚は、一目見てわかります。
体色の鮮やかさがなくなり、色褪せ、隅のほうでじっとしたまま動かず、餌にも見向きもしなくなり、ひれをとじたまま、落ち込んでいるような感じに見えます。
このような場合には、病気がそれなりに進行している場合が多く、すでに何かしらの病魔が魚の体を蝕んでいってることがほとんどなので、発見次第、すぐに対処してあげないと手遅れになってしまいます。
また、いつでもそのような魚を発見した時に、すぐに対処できるように日ごろから準備をしておくと、すぐに治療にとりかかることができ、また元気に泳ぐ姿を見ることができたりします。
機材の準備はもちろん、早めの判断と、正しい治療をしてあげるためにも、病気に対する知識だけはあらかじめ知っておいたほうがいいので、時間のある時に勉強しておくことをおすすめします。
病気の魚を発見してから、ネットで調べ、翌日に機材を揃える。
なんてことをやっていたら手遅れになってしまいます。
最低限、自分の飼育している魚の種類・環境で、かかり易い病気の原因・症状・対処法・薬の種類は知っておきましょう。
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熱帯魚の病気の発見
魚の病気は人間と同様、早期に発見することが大切。
病気を発見するために、観察するポイントを決めて順に見ていきましょう。
1.体の異常
白い斑点がないか、粘膜はいつも通り正常か、綺麗に発色しているか
2.ヒレは張っているか
破れたり裂けたりしていないか、たたんだままになっていないか、付着物などがないか
3.口周辺に異常がないか
正常に開閉しているか、傷や付着物はないか
4.目の色が濁っていなか
5.フンはいつも通りか
6.餌を食べずに残していないか
7.飼育設備は正常に動作しているか
この他にも、飼育水の濁りや臭い、フィルターの目詰まりや異常に汚れてはいないかなどもチェックしておきましょう。
熱帯魚の病気の種類・症状・原因・対処法・薬
白点病
症状:原虫が皮膚、ヒレ、エラなどに寄生する。
原因:水質悪化、過密飼育、餌の過剰投与、水温の変化などのストレスが加わると発症しやすくなる。
対処法:水換え、薬浴、水温を1℃上げる、塩添加
薬の種類:マラカイトグリーン、メチレンブルー、グリーンF
尾腐れ病
症状:尾が白っぽく溶けるようになったり、ボロボロに裂けたり破れたりする細菌感染症。
原因:白点病と同様のストレス、魚同士の競り合い、外傷により発症する。
対処法:薬浴、早期発見と治療が重要。
薬の種類:グリーンFゴールド、エルバージュ
松かさ病
症状:ウロコが松かさのように逆立つ
原因:エロモナス細菌の感染で発症。
過密飼育、餌の過剰投与、水の腐敗などの環境悪化。
対処法:環境改善、薬浴。
治療が難しい病気なので、日頃から環境を良好に保ち、未然に防ぐことが重要。
薬の種類:パラザンD、グリーンFゴールド、エルバージュ
カラムナリス症
症状:初期段階では幹部に黄色がかった白色のものが付着しているように見える。
患部が数箇所に形成される場合と一箇所の場合がある。
部位によってはエラ腐れ病、ヒレ腐れ病、尾腐れ病、口腐れ病などとも呼ばれる。
原因:細菌感染症。
対処方法:塩添加、薬浴
薬の種類:パラザンD、グリーンF、グリーンFゴールド
コショウ病(ウーディニウム病)
症状:白コショウをまぶしたような白っぽい点が体表に沢山現れる。
原因:ウーディニウムという虫が体表に寄生する。
水質悪化、環境の急変
対処法:水温を1~2℃上げる、水換え、薬浴。
薬の種類:グリーンF、マラカイトグリーン、メチレンブルー
綿カビ病
症状:体に白いカビが付着したり、ただれたように見える。
原因:カビの着生、春・秋に多く見られる
対処法:水換え、薬浴、局部的なものはピンセットなどで幹部を除去し、グリーンFを塗布
薬の種類:マラカイトグリーン、メチレンブルー、グリーンF
外傷
症状:すれたりぶつかったりして傷がついたり、穴があいたり、ヒレが切れたりする。
原因:移動時に容器に衝突、他魚とのつつきあい
対処法:薬浴
薬の種類:グリーンFゴールド、エルバージュ
熱帯魚が病気にならないために
①ろ過器のつまり、汚れをこまめにチェックし、汚れていたら掃除をする。
②餌を与えすぎたり、過密状態で飼育しない
③飼育水の酸性化を防ぐ
病気は治療よりも予防が大切。
これらのことに気をつけながら良好な飼育環境を保つようにしましょう。
熱帯魚に寄生する寄生虫
飼育魚がすみのほうで動かずじっとしている、餌を食べない、フラフラしている、体をこすりつけるような仕草をしている場合、体表をよく観察してみると、寄生虫がついていることがあります。
魚の中で流れる時間と人間の中で流れている時間とでは大きく差があり、魚の病気の進行はとても早く、対処が遅れるとすぐに手遅れになってしまいます。
寄生虫は魚の体表を傷つけ、傷口には他の細菌が感染しやすくなり、それが原因で命を落とすこともあるので、素早い対応が必要です。
寄生虫の種類
ウオジラミ
特徴:チョウとも呼ばれる寄生虫。
規制するのは1~5mmほどの成虫。
針を刺して吸血し、毒液を注入するため、魚の皮膚が痛む。
対処法:ピンセットで成虫を除去後、薬浴
イカリムシ
特徴:頭部を魚の体内に侵入させ、刺さったまま固着成長する恐しい寄生虫。
対処法:幼生には薬浴、成虫はピンセットで除去して薬浴
熱帯魚を病気から守るには?
殺菌灯を設置
殺菌灯ランプを設置することで調子が良くなる場合もあるようなので、どうにもうまくいかない方は試してみるのも予防策の一つです。
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トリートメント水槽で薬浴
購入した魚を本水槽に導入する前に、トリートメント水槽で数週間管理し、様子をみましょう。
その間に、健康な状態かどうかをチェックし、細菌や寄生虫を持ち込まないように、実践することをおすすめします。
サーモスタットとヒーターで温度管理
白点病にかかった時に、水温を30度まで上げれば、白点虫(イクチオフチリウス)が早く死滅するようです。
水温固定式のオートヒーターよりも、可変式のサーモスタットやヒーターを使用すると温度管理による対処法も実践できるようになります。
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病魚の隔離と薬浴
細菌感染症は、病魚から他の魚へ伝染してしまうため、病魚のみを隔離する必要があります。
元々病魚がいた飼育水ごと隔離するわけですが、気をつけたいのは水量で、それまでの環境よりも小さい容器へ移動する場合が多く、水質が悪化する早さや、水温の変動は病魚に負担になります。
投薬によるダメージもストレスになり、隔離するべきか、隔離せずに現状のまま快方へ向かわせるのがいいのかは飼育者が見極めるしかありません。
また、魚病薬はほとんどのものが水草にダメージを与えるため、水草水槽ではできないことが多く、隔離することになります。
魚病薬
薬は、最低限必要なものは、常備薬として持っておくことをおすすめします。
それぞれの症状に合ったものを選び、基本的には複数の薬を同時に使用はしません。
仕様の前には、付属の説明書をよく呼んで、用量を守って使うようにしましょう。
薬の種類
ニューグリーンF
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効果のある病気:白点病、尾腐れ病、綿カビ病、外傷、細菌性感染症
粉末状の薬で、包になっているものやボトル入りのものがあります。
対応できる病気のお種類も多いので常備薬としてもっておくのもいいでしょう。
メチレンブルー
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効果のある病気:白点病、尾腐れ病、綿カビ病
青色の水溶液で、水量に応じて投薬。
購入した魚を検疫するのに使用されることが多い。
アグテン
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効果のある病気:白点病、尾腐れ病、水カビ病
青色の水溶液で、水草やバクテリアにも影響がすくないのが特徴。
添加後に短時間で色素は抜ける。
グリーンFゴールド
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効果のある病気:尾腐れ病、細菌性感染症、外傷
黄色の顆粒で包みに入っっています。
使用料を直接水槽に溶かして薬浴することになります。
常備薬として持っていてもいいでしょう。
エルバージュエース
効果のある病気:尾腐れ病、松かさ病、カラムナリス症、外傷
黄色の顆粒。
使用量の調節が難しい場合はグラスなどに飼育水をとって、エルバージュ水溶液を作ってからすこしずつ投入すると使いやすいです。
観パラD
効果のある病気:エロモナスによる穴あき病、松かさ病
透明な液体状で、成分として抗菌剤も入っています。
エロモナス属などによる細菌感染症の治療薬。
トロピカルN
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効果のある病気:ウオジラミ、イカリムシなどの寄生虫の退治
寄生虫を駆除するための粉末で飼育水に直接散布。
ウオジラミやイカリムシをピンセットなどで直接取り除いたうえで使用する。
塩
0.5%前後の濃度での塩水浴(水1リットルあたり塩5g)での治療はふるくから行われています。
塩は魚の浸透圧を調整する肝臓の負担を軽減させ、殺菌効果をもっています。
マラカイトグリーンなどとの併用をテクニックとする愛好家も多くいる。
最後に
ここでは、観賞魚がかかる病気の種類・症状・原因・対処法・投薬の種類などを紹介しましたが、もちろん、人間と同様に、病気は予防することが最も大切なことです。
いくら知識があっても、薬や設備を整えても、病気に何度もかかるようでは、飼育というよりは魚を痛めつけているだけです。
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飼育者としても、ゆっくり鑑賞を楽しみたいのに、治療ばかりしていたのでは何をしているのかわからなくなります。
何度も言うように、考え方は人間と同じで、病気の原因のほとんどが、過度のストレスや、環境の悪化によるもので、それらは、適切な濾過と餌のバランスの維持、水温の維持、定期的な水換えで解決できるものです。
日頃から、飼育状態をよく観察し、良好な飼育環境を維持していれば病気にかかることはほとんどありません。
発見するタイミングにもよりますが、一旦病気にかかってしまうと、完治するまでが大変で、病気によってはあっという間に命をおとしてしまうものもあります。
そのような最悪な事態を想像すれば、管理を怠る理由はありません。
大切な飼育魚に長い間元気でいてもらうためにも、水槽容量は大きく、濾過も大きく、温度は適温に一定に維持、餌は少なめ、定期的にフィルター掃除、適度に水換えをおこなうようにしましょう。
それが熱帯魚飼育です。
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